依頼先の決め手
園芸農家として花の栽培をしているNさんは、その広い農園のなかで自然と交わるような平屋を計画しました。大きくひらけた南向きの眺望を特に重視した間取り・デザインとしながら、お仕事のための施設を背負うような建物配置にしてプライベート空間との関係性を希薄にすることで、空と大地を感じながらリラックスできる家となりました。
完成した家の特徴
家の内と外の境界が曖昧に感じられるほどに効果的に配置された、大きな窓や内装の自然素材が、ナチュラルな存在感で住む人を包み込むことで、心穏やかな生活を約束する平屋の住宅です。屋内では視線が伸びやかに誘導され、坪数以上に広く感じられる間取りとなっています。思い切って南側に部屋と窓を集中しつつ、北側の空間にも豊かな採光能力をもつトップライトや光を遮らない間仕切り収納を設けることで、爽やかな雰囲気を獲得しています。
栃木県在住/Nさんのお住まい
《延床面積》113.44㎡(34.25坪)
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外壁は耐候性や防藻・防カビ性に優れた素材が吹き付けられており、優しい質感です。建物配置は、眺望を楽しめるように、そしてプライベートと仕事の空間の区切りをつけられるように考えられています。
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リビングと玄関ホール(写真の右奥)のアクセントウォールに用いられているのは、栃木の県産材である大谷石。多孔質なため調湿・調温効果に優れており、住空間にぴったりです。
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L・D・Kの床は、無垢の杉の圧密(木の表面に熱と圧力をかけることで表面の強度が増し、木目も浮き上がるために柔らかな凹凸が生まれた板材)を用いていて、素足にも優しく温かな感触が伝わります。硬すぎず、滑りにくい素材のため、年齢を問わず過ごしやすい床となっています。窓側には、猫ちゃんのためのスペースが設けられています。
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シックで開放的なペニンシュラ型キッチン。IHヒーターの前にはガラスのオイルガードがあり、視界を遮らずに油跳ねからダイニングを守ります。パントリーへのドアは、あえて壁と同じカラーにすることで存在感を消してあり、とてもスッキリした空間になっています。
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キッチンからはLDKだけでなく和室の奥まで見渡せます。勾配天井や見せ梁を一番楽しめるのもこのキッチンです。正面に並ぶ掃き出し窓と障子は、どちらも天井まで届く大きなものでシンメトリな美しさがあります。
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玄関ホールからリビングに入ったとき、まっすぐ前に見えるのが額縁のような窓と、そこからの故郷の借景です。障子を閉じれば和室がより特別な空間へと変わります。
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琉球風畳の敷かれた和室と、オークの無垢材の敷かれた主寝室は、天井が同じ無塗装アルダー材の羽目板です。こうした木の内装は、やがて味わい深い色合いへと変化し、魅力が増していきます。
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建物の北側に面する洗面脱衣室と中廊下は平行に配置され、充分な光を採りこむトップライトと、光を遮らない貫通型のウォールシェルフによって、どちらも明るく爽やかな演出がなされています。
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洗面脱衣室と廊下をゆるやかに仕切る貫通型のウォールシェルフは、バスケット(カゴ)を使うことでオシャレ&機能的に使える上に、どちらの空間でも閉塞感を感じさせない仕掛けになっています。
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無垢の木の洗面台と繋がる家事カウンターと、幅1600mmもあるミラー。その上の横滑り出し窓も、幅を合わせてデザインされています。洗面室と脱衣室の床はどちらも肌触りの良い無垢の杉ですが、水に強く腐りにくい赤身(木の芯に近い部分)を使用するなど、部屋の用途に合わせたチョイスとなっています。
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玄関に入ると、右手の大谷石のアクセントウォールから視線を導いて、立派な杉の大黒柱が目を楽しませます。ホールとリビングの間にある木のルーバーは、優しく視線を遮りながらも暗くさせない仕切りです。シューズクロークの奥はゲストからは見えにくい間取りになっています。
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シューズクロークはそのままキッチン裏手のパントリーと一直線に繋がっていて、たっぷり買い物をした後もラクラク整理ができます。ずらっと並ぶ稼働棚は使い出がありそうです。